歯周病と糖尿病の関係

歯周病と糖尿病は、互いに悪い影響を及ぼし合う関係にあることがわかっています。糖尿病があると歯周病になりやすく進行しやすい一方で、歯周病があると血糖のコントロールが難しくなることが指摘されています。ここでは、その関係と、歯科でできることを説明します。

歯周病と糖尿病が互いに影響することの図解。糖尿病から歯周病へ:高血糖が続くと歯ぐきの炎症が起こりやすく、治りにくくなる。歯周病から血糖管理へ:歯周病の炎症が続くとインスリンが効きにくくなり、血糖管理に影響することがある。歯科と内科で連携してケアする

糖尿病があると歯周病になりやすい

糖尿病のある方は、歯周病になりやすく、進行しやすいことが知られています。27の研究をまとめた解析では、歯周炎のある人の割合は糖尿病のある方で67.8%、糖尿病のない方で35.5%と報告されています。2型糖尿病は歯周炎の発症リスクを34%高めるとされていますが、血糖が十分にコントロールされている2型糖尿病では、発症リスクは増加しないと報告されています。

血糖の状態による違いもみられます。HbA1cが8.0%以上では歯周組織の状態の悪化が示され、血糖コントロールが不良な方(HbA1c 7.0%超)では、5年後の付着の喪失や歯を失うリスクの増大と関連していました。一方、血糖コントロールが良好な方(HbA1c 7.0%以下)では、そのような関連は認められていません。

歯周病があると血糖値が下がりにくくなる

歯周病の原因は、歯の表面に付着したプラーク(歯垢)です。プラークの中の歯周病原菌が歯と歯ぐきの間の歯周ポケットで増えると、歯ぐきに炎症が起こり、歯を支えている骨が溶けていきます。

中等度以上の歯周ポケットが口の中全体にある場合、そのポケットの表面積の合計は手のひらと同じくらいと考えられています。ポケットから血流にのった炎症に関連する化学物質は、血糖値を下げるインスリンを効きにくくします(インスリン抵抗性)。歯周病を起こす細菌の多くは内毒素を産生し、これが体内に入ると、インスリンの働きを妨げる物質が多く作られることがわかってきました。

歯周病の治療で血糖値はどうなりますか

歯周病の治療をすると血糖のコントロールが改善するという研究成果は数多く報告されています。歯周治療によるHbA1cの改善度は平均0.4%くらいといわれ、糖尿病のお薬1剤分に匹敵するという人もいます。

ただし、すべての方で必ず血糖値が下がるわけではありません。歯周基本治療は、血糖コントロールの状態にかかわらず歯ぐきの状態を改善しますが、血糖コントロールが不良な方では効果の一部が劣るとされています。歯周治療によって糖尿病の合併症が減る可能性も示されていますが、研究の数はまだ少なく、十分なエビデンスがあるとはいえません。糖尿病そのものの治療は、内科の主治医による管理が必要です。

歯科では何をしますか

歯周病の治療で行うことの図解。1. お口の状態を調べる(歯周ポケット・歯垢を確認)。2. 歯みがき方法を練習する(毎日の歯垢除去が基本)。3. 歯垢・歯石を取り除く(歯科で専門的に清掃)。2型糖尿病では血糖コントロールの改善につながることもある。効果には個人差がある

歯周病の治療では、まずすべての歯で歯周ポケットの検査とプラークの付き具合の検査を行います。そのうえで、ブラッシング指導により、ご自身でプラークを取り除けるように練習します。これをプラークコントロールと呼び、治療の中心になります。

歯科医院では、歯周ポケットの中に付着したプラークや歯石を、超音波の機器や手用の器具で取り除きます(スケーリング)。一度治療が終わっても歯周病は再発することが多いため、定期的なチェックとケア(メインテナンス)を続けることが必要です。

通院の間隔とご自宅でのケア

毎日のケアと定期的な通院の図解。ご自宅では、歯みがきに歯間ブラシやフロスでの歯間の清掃を加え、うがいだけで済ませない。歯科医院では、お口と体調に合わせて通院し、受診間隔は歯科医師と相談する。症状が落ち着いてもチェックとケアを続ける

受診の間隔は、お口や体調の状態によって異なります。一般に、糖尿病のない方では3〜6か月に1回程度が目安ですが、糖尿病のある方は体調の影響を受けやすいことから、歯科医師と相談しながら3か月以内などややこまめな受診をすすめられることがあります。血糖値の状態によっては、月1回程度の受診が提案されることもあります。

プラークは、水や洗口剤で口をすすぐだけでは取り除けませんが、毎日の歯みがきで取り除くことができます。歯ブラシに加えて、歯と歯の間は歯間ブラシやデンタルフロスで清掃しましょう。

歯科を受診するときに伝えてください

歯科受診の前に伝えることの図解。糖尿病の治療内容(飲み薬・注射薬など)、最近の血糖値・HbA1c(検査結果があれば持参)、お口や食事の変化(出血・腫れ・食べにくさなど)。歯科治療の予定は糖尿病の主治医にも伝える。薬は自己判断で変更せず主治医に相談する。出血・腫れ・歯の揺れなどに気づいたら早めに歯科へ

歯科を受診するときは、糖尿病があることと、現在行っている治療(お薬の使用など)を、あらかじめ歯科医師にお伝えください。血糖値の状態によっては、治療の効果が十分に得られにくい場合があり、治療のタイミングを慎重に検討することがあります。

また、歯科治療のあとに痛みで食事が十分に摂れないことがあります。お薬による治療を受けている方は、食事の状況に応じて内服や注射製剤の調整が必要になることがあるため、歯科治療を予定している場合は、糖尿病の主治医にもあらかじめお伝えください。

歯みがきのときの出血、歯ぐきの腫れ、口臭、歯が長く見えるようになった、歯の揺れを感じるといった変化に気づいたときは、次の予定を待たずに歯科を受診してください。

よくある質問

糖尿病があると歯周病になりやすいのですか?

糖尿病のある方は歯周病になりやすく、進行しやすいことが知られています。27の研究をまとめた解析では、歯周炎のある人の割合は糖尿病のある方で67.8%、糖尿病のない方で35.5%と報告されています。ただし、血糖が十分にコントロールされている2型糖尿病では、発症リスクは増加しないと報告されています。

歯周病の治療で血糖値は下がりますか?

歯周治療によるHbA1cの改善度は平均0.4%くらいといわれています。ただし、すべての方で必ず血糖値が下がるわけではありません。糖尿病そのものの治療は、内科の主治医による管理が必要です。

どのくらいの間隔で歯科に通えばよいですか?

一般に、糖尿病のない方では3〜6か月に1回程度が目安です。糖尿病のある方は体調の影響を受けやすいことから、歯科医師と相談しながら3か月以内などややこまめな受診をすすめられることがあります。実際の間隔は、お口や体調の状態をみて歯科医師と相談して決めます。

参考文献

  1. 糖尿病情報センター(国立国際医療研究センター糖尿病研究センター) 歯周病と糖尿病の深い関係 (糖尿病情報センター) (2026)
  2. 日本歯科医師会(テーマパーク8020) 歯周病と糖尿病の関係 (テーマパーク8020・日本歯科医師会)
  3. 特定非営利活動法人 日本歯周病学会 糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン 改訂第3版 2023 (2023)